
写真撮影や文化施設の支援で真庭市の観光を促進。外国人観光客がゆっくりできる宿づくりを目指して。【真庭市地域おこし協力隊 鷲尾貴志】
地域おこし協力隊インタビュー003
「真庭市勝山で、外国人観光客がゆっくりできる宿をつくりたい」。
そう語るのは、真庭市の地域おこし協力隊として、写真や英語のスキルを活かした観光PRや文化的施設の展示の支援を行なっている鷲尾貴志さん。
大学時代に訪れたモンゴルで観光業に目覚め、観光業で長年キャリアを歩んできた。鷲尾さんの写真を見ていると、思わずその幻想的な世界に飛び込んでしまいたくなる。電子書籍で真庭市のフォトブック出版も実現した。
観光業でマルチに活躍する鷲尾さんに、真庭市での活動や地域おこし協力隊での心構えなどについて語っていただいた。
モンゴルで観光業に目覚める。岡山で宿を開業したい。

COCO真庭 吉田:地域おこし協力隊に参加したきっかけや経緯を教えていただけますか?
鷲尾さん:私が観光に目覚めたルーツは、大学生の時に1年間休学してモンゴルにボランティアに行ったことだと思います。その時は就職活動の時期だったのですが、将来何がしたいかわからなかったので、今思えば逃げるようにモンゴルに行ったんです。
そこで見た景色が、いまだに鮮明に覚えているぐらい衝撃的なものでした。人工物が何もない大草原に、吹雪の後の雪が少しだけ残っていて。今まで自分がいた世界がとても狭かったことに気づかされたみたいで、気づいたらその景色を前に一人で笑っていました。自分の中の何かが崩れた瞬間です。そんな経験から、将来の仕事と観光が結びつきました。
真庭市に移住前は、ホテル勤務や福井県大野市での地域おこし協力隊などをしてました。大野市での活動内容は、観光協会のスタッフとして観光促進に関するあらゆることです。真庭市では勝山地区で宿を開業することを目標に、まずは地域との関係性を育むために、2回目となる地域おこし協力隊に着任しました。

COCO真庭 吉田:日本全国にたくさんある観光地の中で、なぜ真庭市だったのですか?
鷲尾さん:まず、岡山県はもっと観光業が栄えるポテンシャルがあると思ったからです。近くの京都や広島はすでに多くの外国人が訪れていますが、中間にある岡山はまだまだ少ない状態。新幹線での動線がすでにあるのだから、魅力的なものを打ち出せばもっと来てもらえるはずだと思いました。
実は福井県大野市で地域おこし協力隊として活動したのも、同じ理由です。隣の石川県は関西圏からの観光客が多いのに対して、福井県は新幹線で中間地点にもかかわらず素通りされてしまうことが多い。動線があるので、観光客の目が引ければ立ち寄ってもらえると思いました。
それに、個人的にも昔から岡山に思い入れがあります。大学受験の時に進学を希望していた大学が岡山にあったんですよね。また、以前から「地方都市」という言葉がとても好きで。「地方都市=岡山」と自分の中ではつながるぐらい、岡山は私にとって憧れの場所でした。
それで岡山で観光系の仕事をしようと、まず県南部のホテルに就職しました。働きながら、将来自分が宿を開業する場所を探していくなかで、真庭市にたどり着きました。そのなかでも蒜山地区や湯原地区はすでに外国人を受け入れる宿がある一方で、勝山は美しい城下町の街並みが残っているのに、私が探した限りでは外国人をメインに受け入れる宿がほとんどなかった。それで将来、勝山で宿を作ろうと移住を決めました。
写真撮影と文化施設の支援で、真庭の観光を促進

COCO真庭 吉田:地域おこし協力隊として行なっている活動内容を教えていただけますか?
鷲尾さん:大きく2つあります。1つ目は観光の発信向けの写真を撮影して提供することです。市の関係部署や観光局など観光や真庭市のPRを行っている組織や団体に、フォルダで共有し、自由に使っていただけるようにしています。
観光の発信には写真がつきものです。しかし、福井県大野市での協力隊の時に気づいたのですが、市役所や観光協会など観光に携わる組織内に、写真素材を撮りにいく時間や経験を持つ人がいないことがよくあります。そこで、私が前回の協力隊での経験を活かして、真庭市全域の観光地で写真を撮っています。
撮った写真は、Googleマップ上にも登録したり、Instagramのmaniwamomentsで発信したりして、真庭市の認知拡大に役立てています。

鷲尾さん:2つ目は勝山の文化施設の支援です。三浦邸(椎の木御殿)・勝山郷土資料館・勝山武家屋敷館で、パンフレットやキャプションパネル(説明書き)の作り替えを行っています。
例えば勝山武家屋敷館では、鎧や槍などが置いてあるのに、その説明書きがなかったのです。それでは来場者も物足りなく感じるので、市役所に相談して、日本語と英語の表記のキャプションパネルを作成して設置しました。三浦邸でも、簡易的なパンフレットを作成しました。
COCO真庭 吉田:なぜ文化施設に力を入れようと思ったのでしょうか?
鷲尾さん:元々歴史小説が好きで観光では必ず歴史的建造物に行くという私の嗜好もありますが、勝山のような歴史ある街には文化的施設が欠かせないからです。勝山町並み保存地区は歩いたり飲食店に入ったりするだけでも充分に満喫できるのですが、街の歴史を知れるようなスポットがあれば、より城下町を旅している感じを味わえます。歩いてるだけだと外観しか見られませんが、武家屋敷に入れば内観も見られるでしょう。街歩きの基本コースに文化施設が入るようになればいいなと思います。
真庭のフォトブックを出版

COCO真庭 吉田:日々の活動で面白さややりがいを感じるのはどんな時ですか?
鷲尾さん:成果はなかなか目に見えづらいので難しいところですが、地域おこし協力隊としての活動が実を結んで、副業で写真撮影のご依頼につながっているところですかね。最近では真庭観光局のご依頼で、「発酵の息づくまち“真庭”を巡る-まにわ発酵ツーリズム-」に撮影スタッフとして同行しました。また、英語を話せるので、通訳の仕事のご依頼もありました。
以前から感じていたことですが、地方の観光産業には英語力と写真が足りていないケースが多いです。写真で喜んでもらえたり、通訳で感謝してもらえたりする時にやりがいを感じています。地域おこし協力隊での活動は観光関連とはいえ、直接的に観光客の反応が見られるわけではないので、対照的に副業では反応がわかってやりがいを感じやすいのかもしれません。
COCO真庭 吉田:活動で大切にしていること何でしょうか?
鷲尾さん:活動では、まず現状を知ることを大切にしています。自分がやりたいことやできることをグイグイ押し付けるのではなく、会話を通して、現状に足りていないものや相手が欲しているものを探っていく。例えば私の場合は、勝山武家屋敷館に赴いて展示物の説明書きがない現状を知り、キャプションパネルを作ることを提案しました。
テトリスで考えるとわかりやすいかもしれません。空間に合った形に変形して、空間を埋めていく。そんなイメージです。
COCO真庭 吉田:地域おこし協力隊で印象に残っていることはありますか?

鷲尾さん:真庭市のフォトブックをAmazon Kindleで出版しました。タイトルは『photo journey: MANIWA -Exploring a Hidden Gem in Japan-』。勝山・湯原・蒜山を2泊3日で旅をするなかで撮影した写真を時系列に並べました。
出版のいきさつとして、今の時代ほとんどの自治体や観光協会がSNS発信をしており、映える写真であふれかえっています。そのなかで、ただ何も工夫なしに見る人の印象に残るのは難しい。他の自治体がやっていないやり方を考えていたところ、オンラインでAmazon Kindleの広告を見かけたのをきっかけに、出版を決めました。
Instagramで見せられるのは上澄の表面的な部分だけで、その奥にある人の暮らしや文化、考え方、雰囲気はなかなか伝わりづらい。フォトブックであれば写真を連続で掲載することで、1枚の写真だけでは伝えられない奥行きまで届けられるんじゃないかと考えました。
またAmazon Kindleであれば海外に向けても届くなと。ホテルで働いていた時に、よく外国人のお客様がガイドブックをタブレットで見ているのを思い出しました。同じように、電子書籍だったら気軽にダウンロードして、真庭市を知って来てくれるかもしれないという考えです。
外国人観光客にゆっくり過ごしてもらえる宿をつくる

COCO真庭 吉田:現在の居住地はどのように決められましたか?
鷲尾さん:勝山地区の3DKの平屋に住んでいます。地域の不動産屋さんに紹介していただきました。
このエリアにしたのは、将来的に勝山で宿を開業したいからです。外国人旅行者を受け入れられる宿泊施設がまだ少ない上に、JRやバスが通っているので外国人旅行者が来やすいので、自分がやりたい宿をつくるにはぴったりだと思いました。
COCO真庭 吉田:将来、どんな宿を作りたいと考えていますか?
鷲尾さん:主に外国人観光客をターゲットにした、私1人でまわしていけるような規模の宿を考えています。
外国人旅行者にとって、真庭はいい意味で箸休め的な場所になると思っています。周辺の大きな観光地でアクティブに動きまわった後に、真庭の宿でゆったり過ごしてもらい、また次の観光地に旅立つ。そんな中継地として宿が機能すればいいんじゃないかと思います。
COCO真庭 吉田:鷲尾さんの宿、開業が楽しみです。最後に地域おこし協力隊に興味がある方へメッセージをお願いします。
鷲尾さん:まずは地域おこし協力隊がどのような制度か、地方自治体や総務省の要項で把握するのをおすすめします。地域おこし協力隊が自分にやりたいことにフィットするようであれば、チャレンジする価値はあると思います。
取材・執筆:吉田櫻子(X:https://x.com/racco_writer)






