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蒜山の自然環境を保全・再生・維持管理。人の生活と自然が調和する形を模索する。【真庭市地域おこし協力隊 髙橋 慧】

地域おこし協力隊インタビュー005

2026年02月02日 by COCO真庭

真庭市の蒜山地域で地域おこし協力隊として、蒜山自然再生協議会の事務局で活動する髙橋 慧さん。

髙橋さんは以前、愛媛県に住み、長い間造園会社に勤務していました。働くなかで「もっと植物や生き物にとって負担のかからない形はないだろうか」と模索し、「植物や生き物に対してさまざまな立場や目線を持った人の話を聞きたい」と思い退職。兵庫県にある専門職大学院に進学し、主に里地里山の保全管理について学んでいました。

大学院2年生ときに参加した学会で、蒜山自然再生協議会の会長である日置佳之先生から「協議会の事務局の仕事をしてみないか」とお誘いがあり、その後湿原再生の活動に参加するなかで、引き受けることを決意し、単身で真庭市に移住しました。

現在は地域おこし協力隊として、蒜山自然再生協議会で現場での調査や、蒜山高原・鳩ヶ原での山焼きの運営など幅広い活動に携わっています。

今回は髙橋さんに、活動の面白さ大切にしていることなどについて語っていただきました。

造園会社や大学院での経験が、地域おこし協力隊に結びつく

活動フィールドのひとつの鳩ヶ原を歩く髙橋さん

COCO真庭 吉田:まず初めに、真庭市に移住する前にどんな活動をしていたか教えていただけますか?

髙橋さん:元々、私は約14年間、造園会社で働いていました。日々、自分の好きな土をいじったり植物に触る仕事でしたが、「もっと植物や生き物にとって負担がかからず、人にとっても気持ち良い形はないだろうか」とぼんやりと考えていました。

というのも、以前から地域独自の景観が荒れていくのを感じていて、なんとなくさみしさを感じていました。漠然と、その地域で人を含む生き物の痕跡が積み重なって、その場独自の空気感や、独特の安心感のようなものができてくるんだろうな、その部分が大事そうだなと思っていました。あまりにも漠然としていたので、できるだけ興味のある人には会いに行ったり、本を読んだりして勉強していたけれど限界を感じて。それで会社を退職して大学院に進み、主に里地里山の保全管理について学んでいました。

地域おこし協力隊の活動は、今までのキャリアや学びがすべて繋がっていると言う

COCO真庭 吉田:以前から里山に関心があったのですね。そこから、どのような経緯で真庭市の地域おこし協力隊になったのでしょうか?

髙橋さん:真庭市の地域おこし協力隊のきっかけは、蒜山自然再生協議会の会長である日置先生に学会でお声がけいただいたことです。「協議会の事務局の仕事をしてみないか」とお誘いいただき、そのときに事務局で活動されていた元真庭市地域おこし協力隊の千布(ちぶ)さんのこと、地域おこし協力隊のことをお聞きしました。

「長期的に経過観察ができて、自分で手を加えることができるくらいの近さがあるものに携わる仕事につきたい」という希望があり、それにもぴったり当てはまりそうだなと。

さらに、大学でものづくりをする人に囲まれたこと、前職でお客さんから教わったこと、大学院でさまざまなフィールドで見聞きしたこと、今まで経験して学んだこと、すべてがこの地域おこし協力隊の仕事につながるのを感じました。お誘いいただいた時点では私は大学院に在籍中で、卒業後の予定が決まっていなかったこともあり、「これもご縁だな」と思い真庭市の地域おこし協力隊になることを決めました。

山焼きの準備から取材対応まで幅広く活動中

外での身体を使った活動も

COCO真庭 吉田:現在、地域おこし協力隊として、どんな活動をしているか教えていただけますか?

髙橋さん:蒜山自然再生協議会の事務局員として活動しており、ミッションとしては、協議会事務局の運営です。仕事はいろいろですが、例えば、地域の方々をはじめとした委員が連携して協議できる場づくり、山焼きなどの自然再生活動の運営、現場での調査などを行っています。

現在は着任して2か月と日が浅いこともあり、協議会の先輩であり元真庭市地域おこし協力隊の千布さんのお手伝いをしながら仕事を覚えている最中です。

COCO真庭 吉田:蒜山自然再生協議会でのお仕事は外部からなかなか想像しづらい部分があると思うのですが、具体的にはどんなお仕事をしているのでしょうか?

髙橋さん:大きな仕事の一つに、蒜山高原・鳩ヶ原の山焼きがあります。蒜山地域では、一部の地域で、約800年ほど前から山焼きの文化が続き、今でも年に一度、春に行われています。蒜山自然再生協議会は、実施に至るまでの準備から、当日は自分たちも参加しています。

また、自然再生活動はなんとなく行うのではなく、なぜそうするのかという根拠となるものが必要となるので、定期的に調査をしてまとめる仕事もあります。

室内と屋外での活動は、6:4ぐらいの割合です。ちなみに先週(2025年12月頃)は、天谷湿原の地下水位を計測していました。天谷湿原を湿原として再生させる活動が継続的に行われているため、環境が改善されているか調査するのが目的です。地中に120本ほどのパイプを埋めて、そこにセンサーが付いたメジャーを入れて水位を計りました。

蒜山の山焼き(真庭観光局公式サイトより)

COCO真庭 吉田:本当に幅広く取り組まれているのですね。山焼きは何を目的に行われるのですか?

髙橋さん:山に火をいれることで、植物が一定以上の高さに育つのを抑え、草原が森になるのを防いでいます。今、このようにして草原を保つ理由は、この場所特有の生態系の保全です。草原にしか生息していない動植物は、草原が森になると消滅してしまう可能性があります。文化の継承や景観の保全などほかにも理由がありますが、草原にしか生息しない希少な動植物を保護するために山焼きが行われているのです。個人的には今、生態系の保全に取り組むことが必要な理由については、最終的に自分たちが楽しく安心して生きていくためだと思っています。

一方で、過去地域の方によって行われていた山焼きの理由は少し違いました。一部の理由を紹介すると、1つ目は、草原の草が田畑の土壌改良材や肥料になるからです。蒜山地域の黒ボク土は、稲作には向いていない性質を持ちます。蒜山の草原の草資源を田畑の土壌改良材や肥料などに使っていたため、毎年その草資源を一定量得ることが重要課題でした。

2つ目は、茅葺屋根や雪囲い用の茅(すすき)を収穫するためです。4月に山焼きを行うと、枯れ草が焼き払われ、日が土壌に届きやすくなり芽吹きを促進して良質な茅が11月頃から収穫できます。これらの理由は、化学肥料の誕生や茅葺屋根の衰退によって薄れていきました。ですが、過去も今も最終的には人が生きて生活していくために必要だということで共通しています。

蒜山自然再生協議会を地域に開かれた存在にしていく

活動は「大変なところはない」と語る

COCO真庭 吉田:活動ではどんなことに面白さややりがいを感じますか?

髙橋さん:一個人で動くだけでは出会えない人に出会えることだと思います。蒜山自然再生協議会では行政や地域内外の企業、関係機関の担当者、地域の方々など様々な方々とお会いできます。以前から関心を寄せていた方とお仕事でご一緒するなど、今まで知り合えなかった人と出会えるのがやりがいにつながっています。また、方法はいろいろだと思いますが、今している仕事で生計が立てられるようになれば、若い世代の将来の仕事の選択肢のひとつにもなれそうかなとも思っています。

COCO真庭 吉田:反対に、大変なことはありますか?

髙橋さん:それが、今のところ無いのです。地域おこし協力隊になって日が浅くおぼつかないなかで、関わってくださるすべての方が親切で、助けられています。また、真庭市の職員の方々も私たちの活動を応援してくれていますし、気にかけ支えてくれていることを日々感じています。

髙橋さんによる撮影

COCO真庭 吉田:髙橋さんの活動に対して、地域住民の方から反応をいただくことはありますか?

髙橋さん:私自身、蒜山に住んでいないこともあり、まだ地域の方とお話したり、一緒に活動したりする機会が少ない状況です。これは、課題だと思っています。

蒜山自然再生協議会は地域の方も参加していますし、私たちが活動している場所は地域の方々が長年管理されてきた場所なので、ぜひお話も聞きたいですし、関わりを持ちたいところです。

蒜山自然再生協議会は外から見ると少し近寄りがたい存在だと思うのですよね。決してそんなことはなく、みなさんに開かれた存在でありたいと考えています。協議会の活動内容はすべての人に関係していることなので、地域内外、県内県外問わず、さまざまな方と接点を持ちたいと思っています。「こんなことしてみたい」などのお声も気軽にいただけるような存在になりたいです。

最近では「風の便り」という会報誌を、地域の回覧板に入れていただいたりして、少しずつ周知を進めています。

COCO真庭 吉田:活動で大切にしていることは何でしょうか?

髙橋さん:地域おこし協力隊として着任して日が浅いので、まずは蒜山について歴史を含めて知ることから始めたいと思っています。特に様々な方から話を聞くことを大事にしたいです。

というのも、どこかで学んだことをそのまま蒜山での活動で提案できるとはまったく思っていないからです。今まで地域の人をはじめ、多くの人が、蒜山の自然に関わってこられました。その延長線上にいて、今後も続いていく時間を想像しながら活動していきたいと考えています。

少しでも地域のことを理解できるように、図書館で蒜山についての昔の資料を読んだり、蒜山自然再生協議会の委員の方のお話を聞いたりしています。千布さんが取材を受けているのを横で聞いている時間も勉強になります。今はまだ、蒜山についての自分の言葉を持てていないので、これは使ってもいい言葉かなというものを模索しています。自分なりの言葉で自信を持ってスラスラ話せるようになるのが今の目標のひとつです。

プライベートでは美術館・博物館・民芸館を巡る

機材を使った作業も

COCO真庭 吉田:真庭市での生活についてお聞きします。移住者で家を探すのに、苦労される方がいらっしゃいますが、現在のご自宅はどのように見つけられたのですか?

髙橋さん:私も、家探しに苦労した身です。最初、蒜山で人の紹介を頼りに家探しをしていましたが、なかなか見つからず。次に通勤可能な場所で、久世と勝山で不動産屋さんを通して探しました。そこでも入居しようとしたらタッチの差で別の方に申し込まれてしまったなど、なかなか決まりませんでした。最終的に不動産屋さんの紹介で、久世で家を借りることができました。

家のお気に入りポイントは、生活しやすいサイズ感と、窓から見える景色が美しいところ。特に朝、霧が出ていると綺麗なんです。

COCO真庭 吉田:落ち着く住処を見つけたようですね。お仕事後やお休みの日はどのように過ごしていますか?

髙橋さん:仕事後は、スーパーで買い物をして、ラジオやポッドキャストを聞きながら洗濯や料理をして、お風呂に入ったら眠くなって就寝することが多いです。

お休みの日は、家事や用事を一通り終えたら、映画が好きなので観に行ったり、図書館に行ったり、友達に会いに行ったり。岡山・島根・鳥取まで足を伸ばして、美術館や博物館にいくこともあります。

岡山・島根・鳥取あたりは、私の大好きな手仕事の文化が根付いていて、民芸館が多いのも魅力です。工房もたくさんあるので、これから巡ってみたいですね。あと、自分でも趣味で何かつくりたいです。

髙橋さんの蒜山での活動はまだ始まったばかり

COCO真庭 吉田:地域おこし協力隊としての今後の目標について教えていただけますか?

髙橋さん:蒜山自然再生協議会での活動を楽しむことと協議会での活動を通じて、色々な人が「なんか楽しい!」と思えることをいっぱい増やしたいです。

COCO真庭 吉田:最後に、真庭市への移住を考えている方へメッセージをお願いします。

髙橋さん:ご自身があまり無理をしないように進められると良いかなと思います。あとは自分ではどうにもならないことも多いので、タイミングに任せてみるのもありかもしれません。私もタイミングとご縁だけで真庭市に移住しましたから。

取材・執筆:吉田櫻子(X:https://x.com/racco_writer

 

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