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真庭市の山と人を守るレンジャー業務とは?登山者の安全と自然の回復を担う登山道整備【真庭市地域おこし協力隊 大畑良平】

地域おこし協力隊インタビュー006

2026年02月16日 by COCO真庭

真庭市の蒜山地域で、地域おこし協力隊としてレンジャー(自然保護官)業務に取り組む大畑良平さん。レンジャーとは、国立公園をはじめとする自然豊かなエリアで、登山道や施設の整備、巡視業務、維持監視業務、自然環境保全などを行う仕事です。

大畑さんは長年、関東圏でレンジャーとしてキャリアを歩み、「私生活も自然の中で過ごしたい」という思いから移住を検討していました。

そこで知り合いのつてを頼って中和地域に3か月のプチ移住、その後、真庭市に隣接する新庄村に約3年間定住。その間、地域の人々との関係性を築き、畜産やワイナリーでの仕事を経験し田舎ならではのスキルを磨きました。

レンジャーを生業にするために、2025年4月に真庭市の地域おこし協力隊に着任し、現在は主に蒜山地域の山々で登山道整備や巡視業務などを行っています。そんな大畑さんに、真庭市でのレンジャーの活動内容蒜山地域での暮らしなどについて語っていただきました。

レンジャーのキャリアを真庭市で活かす

長年レンジャーとして活動してきた大畑さん

COCO真庭 吉田:まず真庭市で地域おこし協力隊になる前に、どんな活動をしていたか教えていただけますか?

大畑さん:私は、長い間、環境NPOや行政のレンジャーとして活動してきました。環境NPOに最初に関わったのは学生時代で、はじめはボランティア活動の中でレンジャーという仕事を知りました。卒業後、関わっていたNPOにそのまま入職し、その後、日本野鳥の会や行政団体などに所属し、20代30代の多くの年月をレンジャーとして過ごしてきました。

真庭市に移住する以前は、関東圏の都市部に住みながら、自然公園などで働いていましたが、「私生活も自然の中で過ごしたい」という思いがあって。そこで約6年前に蒜山地域の知り合いを頼りに、家族で真庭市中和地域に約3か月間のプチ移住をしました。当時はコロナの影響もあり、本職の休業期間が長かったため、中和(ちゅうか)地域で間借りをしながら、農家の手伝いをするなどして長期滞在をしました。結果として移住を決める前に、真庭のことを知る良い機会になったと感じています。

中和地域での生活が気に入って本格的に移住をしようと、さまざまな住居を探した末、隣町である新庄村にたどり着き、約3年間住んでいた時期があります。その間、蒜山地域にある「ひるぜんワイナリー」で働いたり、蒜山の山々をガイドしている「蒜山ガイドクラブ」に関わったりして、後にお世話になる地域の人々とつながりました。

その後、家族の事情で埼玉に1年間滞在していましたが、「自然に関わる仕事がしたい」という思いがあったため、地域おこし協力隊の制度を活用して、蒜山地域に移住しました。

大畑さんが移住した蒜山地域の美しい高原や山々(真庭観光局公式サイトより)

COCO真庭 吉田:移住に伴って、何かハードルはありましたか?

大畑さん:仕事探しですかね。蒜山地域には期間労働はそれなりにあるものの、仕事の選択肢は少ない傾向があると感じます。

私の場合、移住当初は新庄村の和牛農家さんの手伝いをしていましたが、地元のガイド団体に入会したことがきっかけで、他の会員の方からの紹介で「ひるぜんワイナリー」で働くことになりました。そこでは、主に圃場業務を担当し、ワインの原料となるヤマブドウを管理する仕事をしていました。

それまで一次産業に携わった経験がなかったので最初は慣れませんでしたが、働いていくうちに農業全般の基本的な作業や農業機械の扱い方など田舎で生活する上でのスキルが身についたので、結果的に働いて良かったと思っています。

「レンジャーがいて良かった」と思ってもらえる活動を

登山道整備の様子。登山道を安全に歩けるのは大畑さんたちレンジャーのおかげ。

COCO真庭 吉田:地域おこし協力隊として、どんな活動をしているか教えていただけますか?

大畑さん:まず前提として、日本におけるレンジャーという仕事の定義は曖昧で、この名称を職員に用いている組織や団体によってその定義は様々です。私はどちらかというと「現場での問題解決を活動の中心に据えたレンジャーでありたい」と考えています。そのため、巡視などを通して現場で得られた情報を踏まえて必要な課題解決を行っていくのがレンジャーだと考えています。

また、自然の中で活動することが多いですが、登山道の整備や登山における注意喚起など、活動内容は人に向けて活動しているのも特徴です。行政の手が十分に及びにくい登山道上での問題解決や、自然の情報発信なども心がけています。行政・観光客・地域の住民などにとって「レンジャーがいて良かった」と思ってもらえるような活動につながればと。

一番基本的な業務は、登山道の巡視です。巡視で得られた情報(支障箇所・危険個所・自然情報)などを踏まえて、登山道整備や対処の必要性を確認、蒜山振興局(市の出張所)に情報を共有したのち、緊急性の高いものは対処を行っています。例えば山道に木が倒れていたら、その場で処理したり、後日改めてチェーンソーを持ってきて切ったりといった具合です。

他にも、2025年は登山道整備イベントに力を入れてきました。山を利用する人たちには、何か山に恩返しをしたいと考えている方もいらっしゃいます。そういった方たちと一緒に登山道整備をしています。また、山域での様々な利用や保全の両立を考える上で、利用者数の把握というのも重要なため、センサーカウンターを用いた計測も行い、基本的な情報の収集を行っています。

加えて、ブッポウソウという野鳥の保全活動もしています。ブッポウソウは全国的にも中国地方に多く飛来するコバルトブルーの美しい鳥で、かつては蒜山や新庄村でも身近な鳥でした。しかし近年では生息数が減少し、絶滅危惧種となっています。蒜山に移住前からその保護活動に携わっていますが、今後は学校などとも連携した活動ができればと考えています。

ブッポウソウ

COCO真庭 吉田:蒜山の自然のあらゆることに携わっているのですね。レンジャーの活動でやりがいを感じる瞬間はいつですか?

大畑さん:登山道整備をしている時に、利用者から直接感謝の言葉をいただける時です。登山道の倒木処理をしている時も、「あなたたちのおかげで安全に歩ける」のようなお声をいただきます。仕事をしていて、直接お礼をいただける仕事ってなかなか少ないのではないかと思います。

また、登山道整備では、単に人の利便性のために作業をするのではなく、踏圧で崩れた部分や、失われた植生が回復するように整備しているので、数年後に自分手がけた場所から新たな植物が芽吹いているのを見ると感激します。洗堀箇所に枯木で階段状のものを設置し、土が留まるようにしたところ、数年後にその場所でスミレが咲いていた時は感動しました。レンジャーができるのは自然が回復する基盤を作るだけで、最終的には自然の力によって回復しますが、それでも自分が施したことが還元されたように感じます。

このようなやりがいは、定期的に行っている登山道整備を体験するイベントでも、参加者に味わっていただけます。

修繕の3年後、周囲になじみ、植生が生えた

COCO真庭 吉田:反対に、大変なことはありますか?

大畑さん:あまり大変という感覚がないのが正直なところです。自然の中を歩くことが多いのですが、私はずっとこんな感じで活動をしているので慣れています。他の方を連れて歩くと、疲れてしまう方が多いですが。

精神的に大変ということもほとんどなくて。強いて言えば、仕事で携わっている団体の中での人付き合いはありますが、元々組織で働いていたので大変ではないです。

また、今は協力隊という立場で働かせてもらえるのですが、数年後には自身で仕事を成り立たせなければならないので、そういう意味では大変と感じます。

地域の人々が移住を温かく迎え入れてくれた

登山道整備の仲間とともに

COCO真庭 吉田:活動で大切にしていることは何でしょう?

大畑さん:仕事でも、地域づきあいでも、自分がやりたいことだけの主張だと独りよがりになってしまうので、相手が求めているものを観察して提供するようにしています。例えば地域活動で人と話していて、困っていそうだったら「何か手伝いましょうか」とお声がけするようにしています。後からたくさん助けてもらえることもありますし、自然とお互い様の関係ができてきます。

あと、自分の活動に他人の新たな視点が加わると、新しいアイディアが生まれるので、人を巻き込んで活動することが大切だなと最近は感じています。一人でできるような作業であっても、あえて他の人を巻き込んで一緒に活動してみたりとか。活動中に雑談していると、会議のようなかしこまった場では出てこないようなアイディアやヒントを得られることがあります。自分も相手にとって何か提供できるかもしれないので、相乗効果もあるでしょう。

例えば、この前、地域おこし協力隊仲間である鷲尾さんと山地の巡視活動を行いました。鷲尾さんは観光PRの活動をしているため、蒜山でのインバウンド向けのイベントを提案してくれて、自分だけでは考えつかないようなアイディアだったので視野が広がりました。

COCO真庭 吉田:地域の方々と関わることもありそうですが、どんな反応をいただきますか?

大畑さん:まず、移住してきたことに感謝を伝えられる機会が多いです。「子連れでよく来てくれた」と喜んでくれる人が多いですし、地域行事に参加した時も歓迎されているのを感じるので、自然と地域への愛着も湧いてきます。

仕事に関して言えば、地域おこし協力隊やレンジャーの活動は地域の方々にあまり知られていないので、質問をいただくごとに丁寧に説明するようにしています。

描いていた田舎生活が少しずつ形に

家の前のつかい川

COCO真庭 吉田:真庭市での生活についてお聞きします。移住者で家を探すのに、苦労される方いらっしゃいますが、現在のご自宅はどのように見つけられたのですか?

大畑さん:私も家探しには苦労した部分があります。現在は蒜山地域にある空き家を借りています。地域のガイド団体に所属したのをきっかけに、その会員の方に家を探していることを相談したら、昔その方が住んでいた空き家を貸していただきました。

薪風呂や汲み取り式のトイレなど、古い家ですが、ありがたく住まわせてもらっています。特にお気に入りなのが、家の前に使い川と呼ばれる小川が流れているところです。昔は、使い川で野菜などを洗っていたそうで、今は私の子どもが夏場に水遊びをしています。

あと、生活圏内に生き物がたくさんいるのも良いところです。関東圏に住んでいた時は聞こえなかったような鳥の鳴き声や動物の気配がします。

COCO真庭 吉田:大畑さんにぴったりのご自宅ですね。お休みの日はどのように過ごしていますか?

大畑さん:休みの日も家族で登山していることがあります。妻も山登りが好きで、「あなたばっかり登山してずるい」って言われるので、連れていくんです(笑)。最近は雪がよく降りますが、家からスキー場まで車で10分の距離なので、子供をよく連れて行っています。平日のナイターは地元の子ばかりなので、息子もお友達と滑れるのが楽しいようです。蒜山に住んでいれば、スキーは自然と上手くなりますよね。

雪のない季節は、ビニールハウスを借りて家庭菜園もします。少しでも自給自足に近づきたいと思っていたので、今それが叶いつつあります。

ゆくゆくは自分の管理している山をガイドしたい

大畑さんの背景には、いつも活動する山々

COCO真庭 吉田:今後の目標について教えていただけますか。

大畑さん:現在メインで行っている巡視業務や登山整備については、真庭市中に山地がたくさんあるので、管理するエリアを少しずつ広げていき、また関わってくださる方を増やしていきたいです。

登山ガイドの資格も持っているので、将来的に自分が管理に関わっている山で、レンジャーらしい登山ガイドもしたいと思っています。蒜山は、わざわざ遠くから足を運ぶ価値のある生態系豊かな土地なので、多くの人に知ってもらえるように活動していきたいです。

COCO真庭 吉田:大畑さんのガイドで山歩きしたくなってきました。最後に、真庭市への移住を考えている方へメッセージをお願いします。

大畑さん:まずは住んでみないと自分に合うかわからないので、条件が揃うのなら、短い期間でも良いので住んでみてはいかがでしょうか。真庭市内でも地域によって特性は様々ですし、蒜山内でも集落ごとで特徴が違います。私もプチ移住したからこそ決断できました。

蒜山地域について言えば、冬は寒さが厳しいものの、郊外で自然の多いところに住みたい人にとってはとても住みやすい所です。蒜山には最低限の商店もあり、必要があれば車で数十分の距離で都市部にも移動できます。さほど生活に困ることはないですし、むしろ生活圏は小さいコミュニティの方が楽なので、自分と似たような考え方の人は向いているかもしれません。

 

取材・執筆:吉田櫻子(X:https://x.com/racco_writer

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