地域のタクシー会社にできること。SDGsは、自分にとっての命題。
里山SDGs 001 有限会社フクモトタクシー
◆「だれひとり、取り残さない」
ほんとうの意味での、「だれひとり」。
それが、「SDGs(Sustainable Development Goals)」のテーマです。
持続可能な開発目標、と訳されるSDGsには、17のゴールがあります。
国連で採択された、と聞くと、なんだか世界規模すぎて、壮大で、ピンと来ないかもしれません。けれど、じつはとっても身近。
だって、「だれひとり」のなかには、自分も、家族も入っているのだから。
しかも、真庭市は、「SDGs未来都市」。
SDGsの達成に取り組んでいる地域なんです。
そんな真庭市で、「SDGsの達成に取り組みます」と宣言した企業・団体をご紹介。
「SDGsって、そういうことなんだ」
「じゃあ、わたしにできるSDGsって、何だろう」
そう思ってもらえたら、うれしいです。
今回は、「有限会社フクモトタクシー」さんです。
◆地域が抱える「足」の問題。そのなかで、タクシー会社にできること。
もし、運転できなくなったら、買いものはどうすればいいんだろう。
歳をかさねて、免許を返納したり、腰が痛くてクルマに乗れなかったり。歩いていくには、ちょっと距離もあって。
そんな「地域の足」の問題。
真庭市に限らず、どこの地方も抱える、全国的な課題になっています。
そのなかで、地域のタクシー会社にできること。
真庭市勝山にある「有限会社フクモトタクシー」は、「地域の足」の問題に向き合う、「地域の足」そのものになっています。
「お客さんは、地元の方が多いです。買いもの、病院、免許を返納された方、障がいを持たれた方。観光よりも、地元でのご利用が圧倒的です」
そう話すのは、フクモトタクシーの福本和来さん。
また、フクモトタクシーさんは、真庭市のコミュニティバス「まにわくん♡」の運行も(北部を中心に)行なっています。
「まにわくん」は、200円(子ども100円)で、市内全域を広く、細かくカバーする、まさに地域の足。その路線図は、全身に血が通っていくようです。
運転は、命をあずかる仕事。
また、特定の方を乗せるタクシーと、不特定多数の方を乗せるバスとでは、車輌の大きさ、カタチ、サービスもまるで違います。
それでも――、
「だれかがやらんかったら、困るじゃろう」
社長の言葉で、「まにわくん」の運行にも手を挙げました。
◆決して甘んじない。タクシーというものを改めて魅力あるものへ。
「自分たちのやっていることが、結果的に地域のためになっているのかな」
地域の「足」になる。
だれかがやらないと困ることを、フクモトタクシーさんはしています。
ただ、そこに甘んじていられない、と福本さんは言います。
「もっとサービス・ホスピタリティの質を上げて、タクシーというものを改めて魅力あるものにしたいんです」
甘んじているだけでは、やがてタクシーという事業そのものが、世のなかから取り残されてしまう。危機感を募らせています。
フクモトタクシーさんが掲げる「真庭SDGsパートナー宣言書」には、「確実に事業の継続を実現し、サービスを提供することで、SDGsの達成に貢献します」と記されています。
自分たちにできることを創意工夫して、事業を継続していくこと。
それが、交通弱者、をつくらない。だれひとり取り残さないことに繋がっていく。
その創意工夫が、フクモトタクシーさんの「真庭SDGsパートナー」の宣言に込められています。
たとえば、もっとも重きを置いていると言う、SDGsのゴール9の「イノベーション・インフラ整備」・ゴール11の「住み続けられるまちづくり」。
「公共交通の改善や充実に取り組み、新たな交通システムの構築・生活基盤の確保に貢献します」
フクモトタクシーさんの宣言です。
地域の「足」としてはもちろん、より利便性を上げ、多くの人が利用できるよう、業務改善を行なっています。
宣言のなかにある「新たな交通システムの構築」は、「GTFS(標準的なバス情報フォーマット)」へのデータ提供。
「GTFS(標準的なバス情報フォーマット)」とは、経路検索などをする利用者とバス事業者が、データを共有できるフォーマットです。
「まにわくん」の運行(幹線)状況がわかるGTFSの情報は、福本さんが提供しています。
これはまだ、ほんの一部。
そのほかにも、取り組みを進めています。
たとえば、岡山県内ではじめて、クリーンエネルギー「PHV(プラグインハイブリッド自動車)」タクシーを運用したり。省エネ車種の採用をしたり。
運転にも心を配り、炭素排出量の削減(ゴール13「気候変動に具体的な対策を」)に貢献しています。
などなど。
SDGsが掲げる「ゴール」に沿って、現場・経営と広い視点で、達成へ向けた活動を行なっています。
◆タクシーそのものが、SDGs。だから、自分にとっての命題でもある。
福本さんは、言います。
「事業を継続していくために、いろいろ創意工夫しているのは、タクシー業者そのものが、SDGsをしていると思っているので」
タクシー業者そのものが、SDGsをしている。
言葉のとおり、フクモトタクシーさんはSDGsのゴール、3の「保健:すべての人に健康と福祉を」の宣言で、訴えています。
「人々が医療サービスを受ける権利を確保し、健康と医療へのアクセス改善に貢献します」
言いかえれば、地域の人たちを病院へ乗せていく、買いものへ乗せていく。
地域のタクシー会社として、誠実にしている日々のこと。それが、いつのまにか、だれひとり取り残さないSDGsになっています。
「だから、SDGsって、自分にとっての命題だな、と」
◆SDGsのために、新しく何かをはじめよう。
そう思うことが大切なのと同じぐらい、いまやっていることに「SDGs」という視点を加えてみる。日々の意識を少し「SDGs」に向けてみる。
すると、もしかしたら自分はもうすでに「SDGs」が掲げる17のゴールにつづく道に立っている、と気づくかもしれません。
文・取材:甲田 智之