もっとも身近なSDGs「エシカル消費」って何だろう? に答えつづける、真庭の小さな道の駅。
~道の駅「醍醐(だいご)の里」~
里山SDGs 004 道の駅 醍醐の里
◆「だれひとり、取り残さない」
ほんとうの意味での、「だれひとり」。
それが、「SDGs(Sustainable Development Goals)」のテーマです。
持続可能な開発目標、と訳されるSDGsには、17のゴールがあります。
国連で採択された、と聞くと、なんだか世界規模すぎて、壮大で、ピンと来ないかもしれません。けれど、じつはとっても身近。
だって、「だれひとり」のなかには、自分も、家族も入っているのだから。
しかも、真庭市は、「SDGs未来都市」。
SDGsの達成に取り組んでいる地域なんです。
そんな真庭市で、「SDGsの達成に取り組みます」と宣言した企業・団体をご紹介。
「SDGsって、そういうことなんだ」
「じゃあ、わたしにできるSDGsって、何だろう」
そう思ってもらえたら、うれしいです。
今回は、道の駅「醍醐(だいご)の里」さんです。
支配人の門野和子さんにお話をおうかがいしました。
◆身近なSDGsを実践しつづける、道の駅「醍醐の里」
エシカルという言葉を、ご存知ですか?
倫理的・道徳上の、という意味の英語です。
なんとなく難しそうですが、ひらたく言うと、「法律で決まっているわけではないけれど、多くの人たちが〈これって正しいよね。公平だよね〉と思っていること」です。
エシカルと合わせて、最近よく言われるのが「エシカル消費」。
エシカル消費とは、そんな「これって正しいよね。公平だよね」という思いに基づいている消費のこと。地産地消のものであったり、障がい者支援のものであったり。
つまり、何を買うか、考えるときのひとつの尺度。
「身近なSDGs」とも呼ばれています。
じつは、真庭市にある道の駅が、この「エシカル」について、積極的な取り組みをおこなっているんです。
真庭市の落合にある「醍醐(だいご)の里」。
一見、どこにでもある道の駅ですが、その中身はとてもエシカル!
農家さんが持って来られた野菜を、余すことなく使い切っています。
売れ残った野菜たちは、併設しているレストランでしっかりと調理して提供。規格外の野菜たちも、加工して販売しているんです。
・規格外のミニパプリカを、ドライベジタブルへ。
・規格外のきくいもを、チップスへ。
・規格外のブルーベリーを、干しぶどうへ。
これは、ほんの一例。
道の駅「醍醐の里」は、そのほかにもいろんな取り組みをしています。
◆ひとりひとりの「選択」で、未来は大きく変わっていく。
はじまりは、エコバッグづくり教室でした。
しかも、レジ袋が有料化するずいぶん前。SDGsという言葉がひろまるよりも前。
「自分たちにできる環境にいいことを」
という思いで、開催しました。
さらに、「エシカル消費って何だろう?」という勉強会も開催。
だれもが、日常的におこなう「消費」。だからこそ、ひとりひとりがちょっと「意識」を変えるだけで、未来が大きく変わっていきます。
たとえば――。
・エコ商品を選ぶ。
・地元の産品を買う。
・障がいのある人の支援につながる商品を選ぶ。
・フェアトレード(発展途上国の貧しい労働者の生活改善につながる取引)の商品を選ぶ。
など。
ひとりひとりが、そういう「選択」をすることで、未来は変わっていくのです。
反対にいえば、
「たくさんつくって、余ったら廃棄すればいい」
「廃棄したあとのことは何も知らない」
「海外の労働者のことなんて知らない。安かったら何でもいい」
「生きもののこと、自然のことだって、自分には関係ない」
そう思っていると、いつか世界はついえてしまいます。
道の駅「醍醐の里」は、そういう勉強会を積極的に主催しています。
◆変わってきた、生産者さんの意識。
やがて、変わってきたのが、「生産者さんの意識」でした。
いつも「醍醐の里」に産品を卸している600人以上の生産者さんです。
あるとき、ひとりの生産者さんが言いました。
「この野菜、規格外なんじゃけど、醍醐の里のレストランで使ってくれん?」
野菜の入った段ボール箱を抱えています。
余ったから、と捨ててしまうのではなく、「なにか活用方法はないだろうか?」と自分たちで考えてくれるようになったのです。
レストランで使いきれなかったものも、捨てません。
肥料(液肥)にして、土壌へ戻し、そしてまた野菜を育てています。加工食品にするものもあります。
すべて大切に使いきる。
それは、生産者さんのモチベーションにもつながります。
◆単なる売り場としての道の駅ではなく、交流のできる場へ。
ほかにも、醍醐の里さんは、「福祉施設」、「障がいのある方」や「地元の高校生たち」ともタイアップをしています。
最近、おこなっているのが、ご年配用「配食おべんとうづくり」です。
看護科の高校生が、メニュー開発をおこない、料理に興味のある高校生たちが、それをカタチにしています。
ごはんをやわらかめに炊いて、うすあじのカボチャをつぶして。
障がいのある方がつくられたものも、コーナーを設けて、販売しています。
「新しいものをつくる、というよりも、いまあるものを生かすことを考えています」
と、門野さんは言います。
「ほんとに、〈人〉という宝がここにはたくさんあって。職人クラスの木工をされている方とか、民芸品を趣味でつくられている方とか、布小物をつくる名人とか」
「ここは、観光地にあるような道の駅ではないんですけど、でも、だからこそ、単なるお店ではなくて、地域の交流の場でありたい、と思っています」
集める場所ではなく、しぜんと集まる場所。
SDGsのゴール17は「パートナーシップで、目標を達成しよう」です。
道の駅「醍醐の里」は、パートナーシップが生まれる場所でありつづけています。
◆SDGsを意識することで、本当に必要なものが見えてくる。
「SDGsを意識することで、お店づくりにとって、本当に必要なものが見えてきました」
スリムに、シンプルになったんです、と門野さんは話します。
SDGsは、「目標」です。
その目標をみんなで共有することで、チームに「1本の軸」が生まれます。
みんなが、その「ゴール」を目指して、歩きだすことができるのです。
そしてまた、SDGsの各ゴール、――たとえば、ゴール14「海の豊かさを守ろう」など。
海のない真庭市からは一見、離れているように思えることでも、海の見える街に住む人たちに、思いをめぐらせることができます。
「SDGsを意識すると、思いやりと想像力が働くんです」
門野さんの言葉のとおり、
道の駅「醍醐の里」は、思いやりと想像力に充ちた、エシカルな空間でした。
文・取材:甲田 智之